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初めての学会発表!!
ゼロから分かる学会ポスター作成
学会でのポスター発表を控えている方に向けて、学会ポスター作成方法をまとめました。ポスター発表のテーマを決めるところから、学会ポスターを受け取るところまでを細かく解説。本記事を読めば初めて学会ポスターを作る方でも、安心してポスター印刷をオーダーできます。実際に学会ポスタードットコムに印刷をお願いしている、筆者(歯科医師)がお送りします。ぜひ最後までご覧ください。
まずは下準備です。学会ポスターを作り始める前に次の4点を確認しておきましょう。
学会でポスター発表を検討している方は、(1)と(2)についてはすでに準備できていると思います。忘れがちなのは(3)の参加登録と演題登録です。両者には登録期間が設定されていますので、期限に間に合うように登録しましょう。
登録が完了したら、ポスター発表の規格(サイズ)を調べます。指定されることが多い項目を以下に示します。
実際の学会ポスターの規格・サイズ。発表する学会によって規格・サイズが異なります。
発表する学会によってポスターの規格・サイズは異なりますので、事前に必ず確認します。不明点がある場合は、学会事務局などに事前に問い合わせておくとスムーズです。
下準備が済んだら、いよいよ学会ポスターの演題名と本文を作成していきます。演題名は和文のみの場合と英文を併記する場合とがありますので、事前に確認します。
学会ポスターでは本文の作り方が規定されていることがほとんどです。症例報告の代表的な構成は、「緒言、症例の概要、治療経過、考察、結論、利益相反」です。各学会によってバリエーションがありますので、演題名とともにサイズをチェックしておきましょう。
筆者はいきなり学会ポスターの作成は行わず、Wordなどの文章作成ソフトを用いて下書きをしています。
Wordを使用して学会ポスターの下書きを行います。自分のやりやす方法を見つけましょう。
文章作成ソフトで作った下書きをもとに、実際の学会ポスターを作成していきます。
学会ポスターにはさまざまな作り方がありますが、PowerPointとテンプレートを使用した方法が簡便です。学会ポスタードットコムでは、「A0サイズ」、「幅90cm×高さ180cm用」、「幅90cm×高さ210cm用」の3種類のPowerPointテンプレートが用意されています。
PowerPointで作成できる最大サイズは142.2cmです。A0サイズは実寸大で作成可能ですが、例えば「幅90cm×高さ180cm」の学会ポスターは通常では作成できません。142.2cmを超える学会ポスターを作る際は、幅と高さを縮小する必要があります。
「幅90cm×高さ180cm」であれば約78%に縮小し「幅70cm×高さ140cm」として作成し、「幅90cm×高さ210cm」であれば約66%に縮小し「幅60cm×高さ140cm」で作成します。
縮小して作成する場合には、実際の学会ポスターサイズと同じ縦横比を維持し、長辺がPowerPointの最大サイズである142.2cmに近くなるように設定するのがコツです。スライドサイズの設定についてはパワーポイントによる学会ポスターの原稿作成でも詳しく紹介されています。
演題名は伝えたいキーワードを盛り込みつつ、簡潔なものを考えます。
作例として提示している学会ポスターのタイトルは「サージカルガイドプレートを使用して低侵襲なサイナスリフトを行った一症例」ですが、「サージカルガイドテンプレート」と「サイナスリフト」がキーワードです。症例報告では、文末が「○○な症例」や「○○した症例」となっている学会ポスターが多いです。
発表者氏名で注意するのは2点あります。1つ目は筆頭著者に「○(マル)」をつける場合がある点です。2つ目は、発表者氏名のローマ字表記です。「Endo S」や「Endo Shinji」などの表記が考えられますが、両者とも発表する学会に合わせた表記にするようにしましょう。
演題番号と顔写真のサイズにも指定があることがありますので、事前に確認します。演題番号についてはポスターに直接印刷する場合と、発表当日に演題番号が書かれた紙を貼付する場合とがありますので、発表する学会に合わせます。演題名などの文字は中央揃えでも左揃えでも、特に指定がなければ問題ありません。
症例報告をはじめとした学術研究では、客観性や公平性が必要となります。特定の企業などから経済的な利益を得ているために、研究結果にバイアスがかかってしまっては問題です。そのためポスター発表では、発表内容と関連する特定の企業などから利益を得ているかどうかを開示する必要があります。
必要に応じて事前にCOI申告書などを提出した上で、学会ポスターにもCOI開示を行うと良いでしょう。COI開示の有無や使用する文言は発表する学会によって異なりますが、COIがない場合には「本研究発表に関して開示すべき利益相反関連事項はない」などと記載します。一般的にはCOIは学会ポスターの末尾に記載されます。
COI開示の一例。本画像と同じ文言である必要はありません。下記のテンプレもお使い下さい。
学会ポスターのデザインについては決まりはありませんが、美しいデザインのほうが読み手にとって親切です。ほかの方の学会ポスターで目にとまるものがあれば、デザインやレイアウトを控えておくと良いでしょう。筆者が学会ポスター作成時に気をつけているポイントを以下に示します。
学会ポスターは大きいため、段組みをしたほうが見やすいこともあります。さまざまなレイアウトを試し、見やすいものを採用すると良いでしょう。
ポスター発表では「一段」のものが多いと思います。
背景色や図表を学会ポスターの端まで印刷(フチなし印刷)したい場合、通常であれば「トンボ」や「塗り足し」という設定が必要になります。学会ポスタードットコムでは、印刷前に縮尺を調整してフチなし印刷をしてくれますので、専門的な設定はいりません。
作例では演題用スペースにフチなし印刷のグラデーションを取り入れていますが、グラデーションには注意が必要です。PCモニター上では滑らかなグラデーションに見えても、印刷をするとトーンジャンプが発生し、色の移行がスムーズでなくなることがあります。
さらに、透過された装飾にも注意しましょう。PCモニター上では透けているように見えますが、実際の学会ポスターが透けることはありません。初めのうちはグラデーションや透過などは使用しないほうが無難かもしれません。
フォントについては、指定がない限り自由です。筆者は「ヒラギノ角ゴシック」や「游ゴシック」を使用することが多いです。フォントサイズは視認性を意識し、小さくなりすぎないように注意します。
上記のポスターは「ヒラギノ角ゴシック」で作成。
フォントサイズは和文タイトル40pt、英文タイトル32pt、本文27pt、キャプション20pt、参考文献16pt。演題名の背景はフチなし印刷にしています。
PowerPointで学会ポスターが作成できたら、PDFファイルとして出力します。「ファイル」>「エクスポート」からファイル形式がPDFであることを確認し、保存します。保存したPDFファイルは必ず確認しましょう。主な確認事項は以下の通りです。
入稿前にPDFファイルの内容に誤りがないか必ず確認しましょう。
学会ポスタードットコムで提供されているテンプレートは、2ページから構成されています。PDFで保存する際は2ページ目を削除し、学会ポスターを作成した1ページ目のみをPDFファイルとして保存します。1ページ目のスライド外の部分は保存されませんので、削除する必要はありません。
PDFデータに問題がなければ、学会ポスターを注文します。
注文する際には、印刷用紙種類とサイズを選択します。印刷用紙種類の選び方については良くあるご質問にアドバイスが記載されていますので、悩まれている方はご一読ください。
紙タイプと布タイプ(防炎クロス)の選択基準は、「持ち運び」と「学会終了後にどこかに掲載する」かです。紙ポスターは折りたたみができませんので、持ち運びの際に大きな荷物となります。航空機を利用して学会に参加する場合には、サイズ制限により機内持ち込みができないこともあります。布タイプであれば折りたたむことができますので、コンパクトに持ち運びが可能です。
また、紙のポスターは丁寧に丸めて持ち帰っても、多少は折り目が付いてしまいます。学会発表後に自社や自院などで掲載する予定がある場合は、折り目が付きにくい布タイプがおすすめです。
学会ポスタードットコムでは配送先の指定ができます。遠方で学会が開催される場合には、宿泊先宛に学会ポスターを発送してもらうことも可能ですので、「お届け先」に宿泊予定のホテルなどを記載します。
注文を終えると学会ポスタードットコムより自動送信メールが届きますので、注文内容に間違いがないか確認しましょう。自動送信メールには学会ポスターの入稿ページURLが記載されています。「ご注文番号」を確認し、リンク先のページに従って、PDFデータを入稿します。
注文時にPDFファイルの入稿は行いません。自動送信メールに記載されたURLから入稿します。
PDFデータ入稿後に学会ポスターの印刷イメージがメールで送られてきます。
実際に送られてきた印刷イメージ。人とのサイズ比較ができ、ポスターのサイズ感やフォントサイズの視認性の確認に便利です。
印刷イメージを確認し、問題がなければ特にすることはありません。印刷イメージに問題がある場合のみ電話(TEL0120-972-222)またはメールでの連絡が必要です。メールに修正期限が記載されていますので、修正が必要な場合は期限内に修正内容について連絡しましょう。
自宅や勤務先、宿泊先などで学会ポスターを受け取ります。学会ではポスターの貼付時間が決まっていますので、学会のプログラムを確認して学会ポスターを貼付しにいきましょう。ポスター撤去の時間も決まっていますので、プログラムに合わせてポスターを撤去したら、学会ポスター発表は終了です。
作例の学会ポスターは「一般社団法人日本デジタル歯科学会 第15回学術大会」で発表したものです。
本記事では初めてのポスター発表を控えている方に向けて、学会ポスター作成方法を紹介しました。初めての学会ポスター作りを円滑に進めるために、特に大切なポイントを以下にまとめます。
ポスター発表はあくまでも研究発表の場です。デザインよりも発表の中身が重要であることは言うまでもありませんが、学会ポスターを作成する心理的ハードルが低いに越したことはありません。本記事が「初めての学会ポスター作り」の一助になれば幸いです。
長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、正しい歯科医療情報を普及することを目的とした「Dentcation」の代表を務める。歯科医療従事者や患者に向けた、Webメディアの執筆・監修を精力的に行っている。
Instagram:https://www.instagram.com/se_dentc/